先日行きつけのBarで
「ジャズ知りたいけど何から聴いていいかわからない、という若者がいたんで “ Jazz Dogs ” 見るように言っといたよ」
とマスターが。 んん〜ん、うれしいが大丈夫か ?!
弊ブログをその人が観てくれたとして、たまたま思い切り小難しい、あるいはマニアック、あるいは変態的なアルバムだったらどうしよう(いや、そんなのが多いような気もする) ?!
「やっぱりジャズは、よ〜分からん」
とそっぽを向かれては、ジャズ界の損失。責任重大だ。
というわけで、 “ 月曜日のブラッド・メルドー ” 終了とともに 新シリーズを開始することにした。
「何から聴けばいいですか?」に対し、
「ソニー・ロリンズのサキソフォン・コロッサス」と答えたいのはやまやまだけど、このブログのコンセプトに従って2000年以降のアルバムという縛りで、わかりやすさ、かっこよさ、親しみやすさを第一に毎週あげていきたい。
題して “ 試験にでる現代ジャズ ≪ 入門編 ≫ ”
(なんで試験やねん)よろしく!
月曜日・新シリーズ
試験にでる現代ジャズ ≪ 入門編 ≫ Vol.001
E.S.T. / Seven Days of Falling / 2003年
ジャズは、世界共通言語となった!
E.S.T. / Seven Days of Falling
Piano – Esbjörn Svensson
Bass – Dan Berglund
Drums – Magnus Öström
++++++++++++++++++++++++++++++++++
JazzDog’s Rating ☆☆☆☆
Degree of
Contemporary / コンテンポラリー度 ☆☆☆
Thrilling Sounds / スリリング度 ☆☆☆
Dramatic / ドラマチック度 ☆☆☆
Elegance / エレガント度 ☆☆☆
Lyrical / リリカル度 ☆☆☆
Romantic / ロマンティック度 ☆☆☆
Sentimental / センチメンタル度 ☆☆☆
Aesthetic / 美しい〜度 ☆☆☆
Ambient / アンビエント度 ☆☆☆
Individual Style / 個性的なスタイル ☆☆☆
Affinity / ジャズ初級者度 ☆☆☆
Stylish cover arts / ジャケ買い度 ☆☆
さて、悩みに悩んだすえに選んだ第1回目を飾るアルバムが、これだ。
E.S.T.(イー・エス・ティー)。
え、アメリカじゃなく北欧ジャズ ?! という声が聞こえて来そう。
E.S.T.(イー・エス・ティー)は、スウェーデンのジャズトリオ。クラシック音楽やロックの要素も感じさせるより新しいジャズを追求。
1993年に結成。90年代半ばにはスウェーデンでその地位を固め、90年後半にはUKのJazzwiseで「トリオ・オブ・ザ・イヤー」に選ばれヨーロッパ中の主要フェスティバルに出演。
2002年アルバム『ストレンジ・プレイス・フォー・スノウ』より「エスビョルン・スヴェンソン・トリオ(Esbjörn Svensson Trio)」から「E.S.T.」に改名、2005年には世界ツアーで成功を収める。クラシック音楽やロックの要素も感じさせるより新しいジャズを追求。
2008年ピアニストのエスビョルン・スヴェンソンが、スキューバダイビング中の事故により44歳で死去。2013年以降、マグヌス・オストロムとダン・ベルグルンドがハンス・エックと組み「project e.s.t. symphony」としてe.s.t.の曲を交響曲風に演奏するツアーを行なっている。
(universal-musicより抜粋)
ファーストアルバムは1993年。
そして、このアルバムは、7作目。
5作目あたりで、オーソドックスなジャズ路線から独自路線へと大きく舵を切っていき6作目が、これ ↓
そして本作と進化。
ここらへんどれをとっても素晴らしいけど、本作の完成度の高さは秀逸だ。
1曲目は、静かな序章。
2曲目当たりから徐々にエンジンが回り出す。
静寂と熱情の交差、美しさと激しさとアンビエント、ダンス・ミュージック的な要素が見事に調和、そしてやがてそれは高みにのぼりつめる。
ジャズは、いまや世界共通語になった。
日本人においては、秋吉敏子が初めてアメリカのバークリー音楽院にジャズを学びにいったのが1956年、渡辺貞夫が1962年。同時期から世界中の若者がバークリーで学び、そして帰国して自国にジャズを広めた。あるいはアメリカにとどまって活躍した。
西洋音楽をアフリカン・アメリカンが取り入れて新たにできた音楽がジャズ。
それが今日、逆輸入的に世界に広まり、各地でまたクラシック音楽、フォーク、ロック、その地の伝統音楽などその他諸々のものと融合して日々ジャズは更新されていて、インターネットによりその動きは加速度を増している。
そんな現代ジャズの大きな特徴を、2000年代初頭もっとも顕著にあらわしたグループがE.S.T.というピアノ・トリオだった。
① アメリカではなく、ヨーロッパ発で
② 黒人音楽という枠組みを大きく離れ
③ ピアノ・トリオという伝統的なフォーマットで、新たなジャズを創造し
④ 商業的にも世界的な成功をおさめた
聴いてもらえばすぐに分かるけど、彼らのサウンドはクラシック音楽やポピュラー・ミュージック、ロック、ミニマム、クラブ・ミュージックなどからの影響をジャズというフォーマットで昇華させている。
不幸な事故で彼らの前進は止まったけど、彼らの音楽は世界中にフォロワーを生みだした。
たとえば、
“ GoGo Penguin ” は、UKジャズの代表選手だけど、現在もっとも世界で売れているピアノ・トリオの1つだ。
そんな後生に影響力の大きかったE.S.T.。
現代ジャズの入り口として、新たな定番として、この1枚はいかがだろう。