キット・ダウンズは、この作品でピアノ・トリオの歴史に新たな1歩を刻んだ!
With this work, Kit Downs marks another step in the history of the piano trio.

Kit Downes, Petter Eldh, James Maddren / Vermillion / 2022
Piano – Kit Downes
Bass – Petter Eldh
Drums – James Maddren
Producer – Manfred Eicher
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JazzDog’s Rating ☆☆☆☆☆
Degree of
Contemporary / コンテンポラリー度 ☆☆☆
Elegance / エレガント度 ☆☆☆
Lyrical / リリカル度 ☆☆☆
Romantic / ロマンティック度 ☆☆☆
Aesthetic / 美しい〜度 ☆☆☆
Ambient / アンビエント度 ☆☆☆
Stylish cover arts / ジャケ買い度 ☆☆☆
キット・ダウンズをここまで引っぱろうとは思っていなかった。
いや〜おもしろい。
このアルバムは、本年度の作品。
すでにダウンズは、ECMから何枚か出してるけど、
これこそが待望のピアノ・トリオ。
またまた、おおきく想像を超えてきたダウンズ。
キット・ダウンズ・トリオでの作品とは、また大きく趣が違うからだ。
ほとんどの曲で定型的なリズムが刻まれない。
ドラムとベースは、ピアノに寄り添うように浮かび上がっては消えてゆく感じ。
終始、3人のインタープレイが続く。
美しい情景が、目前を流れてゆく。
フリージャズではなくフリー・テンポというか、
シンプルな構造ながら曲のカタチは掴みづらい。
アブストラクトといってもいいような部分もあるのだけれど、
決して聴きづらくはなく、むしろ心地よい。
ベースとピアノの絡み、繰り返しながら変化していく様が心地よい。
ダウンズが以前のピアノ・トリオでみせたようなメランコリックな側面が皆無だ。
環境やメンバー、もちろんコンセプトによって様々な反応、表情を見せる、
その引きだしの多さと意外性、イマジネーションの豊富さこそが彼の魅力だ。
ラストのジミヘンの曲以外は、すべてダウンズかベースのペッター・エルドの作。
どの曲もシンプルで哀愁あるメロディが、スタンダードを聴くようになじむ。
澄んだ美しいタッチとハーモニーと立体的な空間構築。
キット・ダウンズは、この作品でピアノ・トリオの歴史に新たな1歩を刻んだ。
名匠ステファノ・アメリオによる録音が、
この新たなECMの星にさらなる輝きをあたえている。
これ、素晴らしい!アナログ盤で欲しい1枚だ。