Jack DeJohnette

Keith Jarrett / Standars Vol.1/ 1983
キース・ジャレット / スタンダーズ Vol.1 / No.3242
Legendary Series / Jack DeJohnette
レジェンダリー・シリーズ
ジャック・ディジョネット / No.004

ピアノトリオとして以降30年をこえる輝かしい活躍の第一歩となった名盤中の名盤。
A masterpiece that marks the first step in a brilliant career as a piano trio over the past 30 years.
Jack DeJohnette / Legendary Series

Keith Jarrett / Standars Vol.1

Piano – Keith Jarrett
Bass – Gary Peacock
Drums – Jack DeJohnette
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JazzDog’s Rating ☆☆☆☆☆
Degree of
Contemporary / コンテンポラリー度 ☆☆
Thrilling Sounds / スリリング度 ☆☆☆
Elegance / エレガント度 ☆☆☆
Feel good / ご機嫌度 ☆☆☆☆
Lyrical / リリカル度 ☆☆☆
Aesthetic / 美しい〜度 ☆☆☆
Groove / グルーヴ度 ☆☆☆
Affinity / ジャズ初級者度 ☆☆
Stylish cover arts / ジャケ買い度 ☆☆

ジャック・ディジョネットの足跡をたどる中で、このアルバムを飛ばすわけにはいかない。
以降40年近くも圧倒的な実力と人気でシーンをリードし続けた通称 ” スタンダーズ・トリオ “。

言わずと知れたキース・ジャレットとゲイリー・ピーコックとディジョネットの押しも押されぬピアノトリオ。
似たような内容のアルバムが次から次へ出るとブツブツ言いながら追っかけてるオジさんも多かったことだろう。

しかし、たとえ好不調の波の底にあるような作品でも、そこいらの凡百のピアノトリオでは、とうてい太刀打ちできないような内容なのだからいたしかたない。

そんなトリオがスタートした動機は、「このままではジャズの伝統が消えてしまう」という止むに止まれぬ思いからだったという。

フォーキーで自由なソロ、止めどなくあふれでるメロディ。
そんなキース・ジャレットのピアノスタイルは、いわゆる伝統とはもっとも遠いところにいる人だと感じていたけど、その人がジャズの伝統を背負って立つ気概に溢れていたとは驚きだった。

もっとも、そこで繰り広げられるジャズは、単なるスタンダード集とは、まったく次元の違うものだった。

↓ こんな記事もあっておもしろい。天才を理解できるのは天才だけだ。

実はこんなことがあった。確かそれはマイルスが他界する数年前、80年代の終わりか1990年のことだったと思う。ニューヨークの人気紙、「The Village Voice」に「マイルスがジャズを殺した」という内容の記事がカラー見開き2面で掲載された。記事は問題発言の多いジャズ評論家、スタンリー・クラウチによるもので、確かウィントン・マルサリスのマイルス中傷の発言も載っていた。マイルスは金で魂を売ったという内容だったと思う。この時丁度CBSは新譜録音に投資するより昔のレコードを再発することで儲けようと目論んでいた時で、クラウチもマルサリスもCBSの裏金が動いての発言と見えた。直後キース・ジャレットはこの記事に対し「ジャズを殺してるのはお前らだ。ジャズの定義は進化だというマイルスの教えを理解しないお前らのような奴らがジャズを殺す。」という内容の3ページに及ぶ抗議文をミュージシャン・マガジンに掲載した。(JazzTokyo – ヒロ・ホンシュクの楽曲解説より)

さて、話をジャック・ディジョネットに振ろう。

アメリカでこのトリオがピアノトリオの定義を変えたと騒がれたのは、繊細とかインタープレイが理由ではない。驚異的な、あり得ないタイムの位置でスイングする3人だからだ。つまり、体験したことのないような快感を味あわせてくれるのだ。チャーリー・パーカー、バド・パウエル、ミンガス、マックス・ローチ達がビ・バップを生み出して始めた、我々が現在に到るまでジャズと呼んで楽しむタイム感は、ベースがオン・トップ・オブ・ザ・ビートでドライブし(ミンガスが、ベースがいつも聴こえないことに腹を立てて始めたとも言われる)、ドラムがビハインド・ザ・ビートでスイングし、そのタイム感の幅の中で他の楽器が突っ込んだりレイドバックしてスリルを楽しむのがジャズだ。このタイム感の話は本誌No. 218を参照されたい。そして、この「スタンダーズ・トリオ」のタイム感が特異なのは、何と言ってもディジョネットのタイム感が特殊で、フィリー・ジョーやジミー・コブが築いた思いっきりビハインドでスイングするライドと全く正反対の、オン・トップ・オブ・ザ・ビートでまくし立てるライドと、ジャズドラマーなら誰でも活用するハイハットで生み出すグルーヴ感を全く使用しない特殊なスタイル。JazzTokyo – ヒロ・ホンシュクの楽曲解説より)

↑ 前述と同じこの記事に、このスタンダーズ・トリオ ” のタイム感覚の異様さが詳しく述べられている。
これを読んでオイラ、はじめて何となく突っ込み気味に聴こえていたディジョネットのドラミングが「そういうことだったのか!」と納得できた。いや、納得できた気がする。

いずれにしても、
ビル・エヴァンスがピアノトリオで達成した高みを大きく更新して、
トリオとしてジャズの歴史にその名を刻む3人の輝かしき1枚。

名盤中の名盤、鉄板中の鉄板。

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