Piano Solo

Brad Mehldau / Suite: April 2020 / 2020年 ブラッド・メルドー / スイート: エイプリル 2020/ No,3051

コロナ禍、オランダで家族とともに自粛生活を送っていたメルドーが、実体験を元に書き上げた組曲 / 月曜日のブラッド・メルドー《最終章》

“ 月曜日のブラッド・メルドー ” ずっと続けてきましたけど、とうとう2020年メルドー最新作まで来てしまいました。ということで本日は《最終章》。もちろん、新譜がでたら、また月曜日に取り上げる。そういう意味では《つづく》だけど、一応月曜企画は来週から替わる(今考えてる)よ。

ということで、2020年のメルドー作品が本作。

新型コロナウイルスのパンデミック下、オランダで家族とともに自粛生活を送っていたメルドーは、自分が今体験していることをもとに12の楽曲を書き上げた。それらの楽曲と、彼個人にとって重要な意味を持つ3つの曲を、メルドーはアムステルダムのスタジオでレコーディングしたのであった。

そうして完成したアルバム『Suite: April 2020』が6月12日に配信で先行リリース。またCDと通常盤アナログレコードも9月18日に発売が予定されているが、いずれも売り上げの一部が「Jazz Foundation of America’s COVID-19 Musician’s Emergency Fund」に寄付される
(HMV&BOOKS online – ジャズ より)

さらに、本作品についてはこう語る。

『Suite: April 2020』は、先月世界中の誰もが経験したであろうことを捉えた音楽的スナップショットだ。多くの人々が共通して、また新たに体験し、感じたことをピアノで描こうとした。例えば〈Keeping Distance〉という曲では、左手と右手を通してソーシャルディスタンシングを実践する2人の人物の経験を辿っている2人がいかに不自然な形で引き離されているか、そしてそんな状態でも何か説明のできない、啓蒙的な方法で繋がっているかを描いている。また、新型コロナウイルスによってもたらされた困難と同じぐらい、新たに明らかになった事実もある。〈Stopping, Listening, Hearing〉はそうした発見についての曲だ。

この1ヵ月間、特に強く感じたこともいくつか取り上げている。〈Remembering Before All This〉は、ほんの数ヶ月前はこうだったのに、今はそれも遠い昔のことに思えると考えた時に突然襲ってくる、ほろ苦い、直感的な痛みを表現している。〈Uncertainly〉は、そう考えた後の感情― 不透明な将来に対しての虚ろな不安を取り上げたものだ。

また同時に、あり余るほどの時間と、より近くなった距離によって、今までにないぐらい家族との絆を深めることができたという歓迎すべき面もあった。最後の3曲は、その絆についての曲だ。一緒に食事を作ったり、ただふざけあったりしている時に、互いから生まれるハーモニーをね。〈Lullaby〉は、今不眠にさいなまれている人たちに贈る曲だ。

ニール・ヤングの〈Don’t Let It Bring You Down〉の歌詞は、常に自分に助言を与えてくれるものだったが、特に彼がこう説く時、今ほどそれを強く思うときは無い。”気落ちしてはダメだ/ただ城が燃え落ちているだけじゃないか/変えていこうとする人を見つけるんだ/そうすればきっと、道が開けるから“。

それからビリー・ジョエルの〈New York State Of Mind〉は、9歳の頃からずっと大好きな曲だ。何年にもわたって故郷と呼んでいる街へのラブレターであり、その故郷から今は遠く離れている。友人や知人も数多く住んでいるし、会えないのは寂しい、そしてあの大都市が今大きな打撃を受けていることも分かっている。また同時に、道が開けていくとも
(HMV&BOOKS online – ジャズ より)

引用だらけで申し訳ないが、本人の言葉が何よりの解説だろう。
そしてまだ、いやさらに世界を取り巻く状況はひっ迫を極めている。

ただ音楽の世界では、コロナ禍においてブラッド・メルドーのみならず、こういったモノローグ的な作品が多くみられた。そして、その多くがじつに良質な作品であることが、せめてもの救いだったかな。

いやそもそも、音楽というのは《救い》であるということを、コロナ禍は我々に再認識させてくれたと言うべきか。

音楽は、我々は、これからどのような世界へ向かうというのだろうか。

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