Large Ensemble

スナーキー・パピーのリーダーのマイケル・リーグは、優れた演奏者であり、優れたプロデューサーであり、優れたマーケッターであり、優れた経営者である。

現代ジャズの隆盛とYouTube動画について

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Jazz Alternativeというジャズ・アルバムの紹介ブログを書き始めて気づいたことがある。
それは、YouTube の影響力の大きさだ。(何をいまさらと嘲ってください)

現代ジャズの隆盛は、 “ グラスパー以降 ” と呼ばれるようにロバート・グラスパーを中心にした大きな流れとして語られることが多い。
そのことに異論があるわけではない。
ジャズを、そして音楽を創造するのはまぎれもなく人であり
「誰がいつどうやって誰と結びついて、こんなことをやった。そして、そのことに影響を受けた誰が……」
というのを追いかけることでしか、ムーブメントの経緯を説明することは不可能だ。
しかしながら、そんな人の営みに影響をあたえているのは社会の変化やテクノロジーの発達であったりもする。
ジャズを創る側の人たちもそうだしジャズを聴く側だって、
それらの環境に影響を大きく受けている。
じっさい僕がJazz Alternativeを書くようになったきっかけはAppleMusicだ。
こんな“ 定額聴き放題 ” サービスのおかげで、僕は地域的あるいは経済的制約から解き放たれて多くのジャズ・アルバムを聴きまくれるようになったからだ。

medium.com

Jazz Alternativeを書くとき、紹介したアルバムの iTunesへのリンクを貼っている。
でも、サービスを利用していない人が、それを聴くためには購入するしかないので、
そんな人も聴けるようにと関連する YouTube 動画を貼り付けるようにしている。
ブログを書いたあと動画を探すのが日課の毎日だ。

そんなある日、スナーキー・パピーの動画を見て驚いた。
とてもよく出来た動画なのだ。
カメラが定点ではなく、しかも複数台で演奏者の手もとや表情までとらえ、
よく編集されている。
ソリストだけではなく聴きどころのフレーズなど奏者の手もとや目配せなどピンポイントで抜いてゆくのだ。
おそらくスナーキーの場合、リーダーのマイケル・リーグがカメラマンに細かな指示を出して入るにちがいない。
そうでなくては出来ないレベルの動画内容だ。


Snarky Puppy – Lingus (We Like It Here)

CDを自宅で聴いていて、いまいちピンとこなかった演奏が、ライブにいって生で聴くとめちゃくちゃよかった。その後、CDを聴いても音がじつによく立体的にアタマに入ってきて楽しい。なんて経験はないだろうか。

それは再生装置の性能あるいは限界が大きな要因ではあるけど、
それ以上に「人間の脳は多くの音を一度にそれほど処理できない」という聴く側の性能にもよると考えられる。
それに長時間音楽を集中して聴くのも、なかなか困難だ。

もちろん演奏者や音楽に深く関わっている人は、そういった音の認識能力が高いのだろう。けれど一般の人、特にインストルメントな音楽をふだんあまり聴かない人の耳には細かな楽器の音や動きは届かない、あるいは残らない。

しかしながら、スナーキー・パピーの動画はそんな「聴くだけ」では取りこぼしがちなところを見事に補ってくれる優れた出来映えだ。
聴くだけではなく目に訴えることで演奏者が届けたい音が脳に刻まれてゆく。
しかも、聴きどころ楽しみどころがよく分からないジャズに不慣れな人に、
楽しみ方のポイントを教えてくれてもいる。
こんな動画観たら当然ファンになるし、ライブに足を運びたくなるというものだ。
このスナーキーの動画には、演奏のすばらしさ、楽曲の素晴らしさを理解してもらって、なおかつライブに足を運んでもらおうという意図がありありと見えるし、
動画を見る方だってもちろんハッピーだ。

CDが売れなくなって久しい。
同時に演奏者はライブ活動へ軸足をシフトしてきている。
そんな流れのなかでのライブへの導引策としての動画利用の模範例がここにある。
スナーキー・パピーを運営するレーベル「GroundUP Music」のサイトを見てほしい。じつに充実しているし、その中心にあるのが動画だ。勢いのあるところは同時に商売上手でもある。

groundupmusic.net

スナーキー・パピーに限らず、レーベル、制作会社、放送局、音楽学校などアメリカの音楽関連は、どこも動画に力を入れている。
日本の音楽業界も「動画配信=売上減」といった過去の概念とさっさと決別してもっと動画に力を入れてほしいものだ(僕が知らないだけならごめん)。

そんなこんなで長くなったけど、
現代ジャズの隆盛を支えているもう一つの側面は、YouTube文化というか YouTubeに代表される動画配信サービスの発達が大きいのではないか、というのが僕の結論だ。

僕のカミさんは、ロックあるいはポピュラー音楽しか聴かない人だ。
それでも僕につきあってジャズのライブにいくと、やっぱり感動して熱く語ったりしている。
とっつきにくいジャズという音楽もじっさいライブを体感すると、その音楽に人は感動する。
YouTube動画という疑似ライブ体験が、ジャズのファンを拡げることに貢献しているというのは間違いのない事実ではなかろうか。

僕はこれまで「MacBookのちんまいスピーカーでは音楽は聴かないでしょ」
とYouTubeをあまり利用してこなかった。
でもAppleMusicを利用し始めてMacBookの音をオーディオセット(たいしたセットではない)のスピーカーから聴けるように設定した。
自ずとYouTubeの音もスピーカーから流れるわけで、
それでYouTubeでの音楽視聴への抵抗も全く無くなった。
まだまだ僕はYouTube初級者で上手に利用しているとは言えないけど、
これからはアルバム紹介のブログでも、動画を紹介の新たな軸として活用してゆきたいな、と思っている。

あ〜そうなると、YouTube有料サービスは魅力的だな。
ヤツらの思うツボなのか ?!
いまはとにかく時間が足りない。
聴きたい音楽、観たい動画が山のようにあって仕事してる(ちなみに今昼休みに書いてる!)時間がもったいない!

snarkypuppy.com

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